その昔、南部の殿様が参勤交代の帰り道、会津から持ち帰ったと言われる妙丹柿。
冬場の農民の糧・収入源として、大根に差し大切に人の手で運ばれた枝。
現在、南部地域に残る妙丹柿の樹齢は200年を超える老木も多く、その当時の一枝が根付いたものとも言われています。
そんなロマンチックで暖かい、民話の世界をそのまま現代に伝える妙丹柿は、干し柿に加工されて全国へと流通していました。甘味が強く繊維や種子の少ない美しい形の妙丹柿は、干し柿の一大産地である和歌山の柿にも引けを取りません。
基本的に放任栽培で無剪定の妙丹柿は、高さ十数メートル。枝も折れやすく危険が伴うことから、食の多様化と生産者の高齢化が進んだ現代、収穫・加工する農家も少なくなっています。
そんな中、そうした消えつつある、昔ながらの豊かな食材や産物・伝統野菜を見直し、商品化する研究プロジェクトが名久井農業高校を中心に立ち上がりました。
美味しいと言われながら手間や見た目での商品化の難しさから、ほぼ絶滅と言われていた「南部太ネギ」を商品化するまでの活動は、各メディアなどで全国に発信され注目を集めました。
次世代の農家の担い手として、名久井農業高校のメンバーが次に注目したのが、この妙丹柿です。
まず、甘い干し柿を簡単に作ることが先決と研究を開始。
昔から柿の渋抜き法は考えられていましたが、手間がかかったり果肉がやわらかくなるなどの欠点がありました。こうした点をクリアしてようやくたどり着いた「光による柿の渋抜き法」は、2011年にに京都大学で開催された発明&事業化プランコンテスト「テクノ愛2011」で、応募400件の頂点に輝くグランプリを受賞しました。
そうした高校生たちの研究を元に、更に発想を広げて商品として開発されたのが、この「南部の柿の物語」シリーズと「妙丹柿チョコディップ」です。
光を使った科学技術で渋抜きをした柿に、オーガニックチョコレートをコーティングしたお菓子やジュース。今後も柿の酵母なども使用して、新しい商品を開発予定です。これからの担い手である、高校生の地元を愛する気持ちから生まれたシリーズです。